Mount Kinabalu International Climbathon 2025

レースレポート

キナバル山国際登山マラソンとは

『クライマソン』は距離26kmで累積標高2800m、標高4095mのキナバル山山頂を折り返すレースです。1987 年から開催されている伝統的なスカイランニングの大会で、2010 年まではスカイランナーワールドシリーズの一戦でもありました。30年にわたり開催されたこの大会は、近年長い間中止されていましたが、2024年にレースが再開。そして、2025年にはスカイランナーワールドシリーズの一戦として復活しました。

クライマソンに参加するには、提出フォームから関連書類とレース結果を提出する必要があります。応募資格は以下の4つです。

1. 歴代クライムマソンフィニッシャー(キナバル山クライミングマソン2024を公式制限時間内に完走したランナー)2. 認定された山岳レースまたはアドベンチャーレース(ルートが1,200メートル以上の山岳/アドベンチャーレースを完走したランナー)3. 国内/公認機関による承認(国内の山岳ランニング/陸上競技団体、またはクライムナソン主催者が認めた他の組織からの推薦)4. 特別な配慮ロピカル レインフォレスト ラン 10 で制限時間内にトップ 2024 に入賞したランナー

合格通知のメールが届いた人は、支払いに進むことができます。私は今回3(スカイランナーワールドシリーズからの推薦・エリート選手枠)で参加することができました。

大会会場への行き方

クライマソンの舞台となるマレーシアと日本の時差は1時間なので、時差ボケの心配はありません。大会は例年10月に開催されており、マレーシアの10月の気温は、平均最高気温が約31度、平均最低気温が約24度と日本と比べて暑いです。ただ、キナバル山付近の町は標高が約1300mほどのところにあるので、平均最高気温が約23度、平均最低気温が約16度と、10月の日本とさほど変わりません。体感としては、マレーシアの方が湿度が高いため暑く感じました。日中は半袖で過ごし、朝方や夜は上着を羽織っていました。

マレーシアへの入国には、2024年1月1日より「デジタル・アライバル・カード(MDAC)」の事前登録が必須となっているので注意してください。登録はマレーシア到着日を含む3日前から可能です。

大会会場への最寄りの空港はコタキナバル国際空港で、日本からの直行便はほぼありません。韓国や中国、マレーシアのクアラルンプール経由の飛行機が多いです。国内のどの空港から行くかで変わりますが、航空券はだいたい5~9万ほど、フライト時間は7~10時間ほどかと思います。私は深夜0時のフライトだったので、空港にあるナップゾーン KKIA バイ ソボテルに朝まで泊まりました。このカプセルホテルは3・6・9・12時間と時間ごとに予約できて便利でした。

コタキナバル国際空港から会場のキナバルパークまでは車で2時間ほど。公共交通機関で行くのは難しいため、レンタカーでの移動をお勧めします。

ただ、国際免許を持っていなくても、東南アジアでは『Grab』というタクシー配車サービスが盛んなので、こちらも利用できます。実際私は友人とGrabのタクシーで移動しました。アプリで簡単に手配できますし、料金も事前に支払うシステムなのでぼったくられることもありません。マレーシアの移動中は電波が入らない箇所が多く、翻訳アプリが使えなくて困る場面もあります。ただ、Grabだと事前にアプリでやり取りが完了しているため、ほとんどドライバーと会話をする必要がないのも楽でした。空港からキナバルパークまで91km、約2時間でRM202(日本円で約7000円)と、日本では考えられない安さでした

今回私は宿泊補助のPerkasa Hotelというところに宿泊しました。ホテルは会場から車で20分ほどのKundasangという町にあり、ここにはマーケットやスーパーもあります。レンタカーの場合はKundasangでの宿泊が便利だと思います。ただ、受付等で前日に会場へ行く必要があるため、レンタカーがないとホテルからの移動手段で困ります。

会場のキナバル公園にもホテルがあるので、レンタカーでない人はそちらに泊まるのをお勧めします。キナバル公園でも自販機等で水は購入できます。

試走

標高4095mまで登る今大会で重要になってくるのが高地順応です。キナバル山は通常、ツアーガイドを付けた人しか入山できません。ただ、事前に大会側から定められた期間には、標高3200mの地点までトレーニングをすることができます。今年のトレーニング期間は大会の前々日まででした。

試走するためにはまず、キナバル公園の事務所でRM10の保険料を払い、トレーニング用のビブをもらいます。荷物は公園で預かってもらえます。事務所の前には公園バスが停車しており、ティンポポン登山ゲート(レースのロード4kmが終わった地点)まで無料で送ってくれます。私はロードを走って事務所まで戻りましたが、帰りも時間によっては(14時ごろ?)ゲートからバスに乗せてもらえたみたいです。

標高1000mで気温は約6.5度下がります。登山ゲートにいるときは暑かったですが、標高2000mを超えてくると肌寒かったです。私が試走した日は天気が良かったのでアームカバーで丁度よいくらいでしたが、曇りや雨だとかなり寒いかと思います。

登山客も多く、「おはようございます: スラマッ パギ (Selamat Pagi)!」とあいさつを交わしながらトレーニングしました。昼頃は「こんにちは: スラマッ プタン (Selamat Petang)」とあいさつがかわります。私は前々日に試走したのですが、トレーニングビブを付けている選手ともたくさんすれ違いました。

レースの時の服装と持ち物

今回クライマソンでは必携装備はなく、推奨装備だけでした。ただ、だからと言って「重いから、楽したいから」と何も持たない訳にはいきません。山は自力下山が大原則。自分がレース途中で行動不能にならないよう、服装や補給を考える必要があります。

私はノースリーブにハーフパンツ、汗冷え防止のインナー、アームカバーという服装で走りました。ウエストベルトには手袋とレインウェアを入れていましたが、どちらも最後まで使わなかったです。ただ、おそらく雲の中を走っていた標高3000mあたりは霧で包まれていて肌寒く、手袋をするか迷いました。雲を抜けた後の山頂付近では、天気が良かったためむしろ汗ばむくらい暑かったです。今年は天気がよかったため寒がりな私でも暑いくらいでしたが、悪天候だと山頂付近は凍えるくらい寒いそうなので、天候によって服装は大きく変わると思います。

@_guaresti_

ノースリーブの下にNaked Runningbandを付けています。500mlフラスコ1個、ジェル5個、ALIVALのボトル1個、レインウェア・手袋を入れて走りました。私の場合、ジェルの数はレースの予想ゴールタイム(今回は4時間30分~5時間)から、1時間30分以降45分ごとに1個補給として、ジェルの数を計算します。

また、足攣り予防にALIVALをレース中チビチビ飲みました。

また、膝と足首・ハムストリングスにINNERFACTのテーピングを巻いていました。大きな段差を下り続けるコースでは、膝がかなり辛かったので、テーピングを巻いておいて本当によかったです。下りでは腰にもダメージがきたので、腰にもテーピングをしとけばよかったかな?とも思いました。

レース本番

ワールドシリーズのホームページでは26kmで標高差2800mとなっていましたが、私のカロスの記録では25kmで累積標高2530mとなっていました。エイドステーションはスタートゴール地点・1866m地点・2700m地点・3668m地点と、登りに3回・下りに3回・スタート・ゴール2回と、計8回あります。エイドの飲み物は水のみでした。食べ物はあったのかどうかわかりませんでした。

国内・国際カテゴリーともに厳格な制限時間が設けられており、男子エリートは山頂まで3時間30分、山頂からゴールまで 3 時間、女子エリートと男子ベテラン(40歳以上)は山頂まで4時間、 山頂からゴールまで3時間30分と定められています。その制限の厳しさから、2024年の大会では全体での完走率が約17%、女性の完走者は3名だったそうです。男子エリートはA番号の赤ゼッケン、女子エリートはB番号の黄色ゼッケン、男子ベテランはC番号の水色ゼッケンと、ゼッケンの色でどのカテゴリーかわかるようになっていました。

スタート(標高1563m)~4km(標高1866m)

レースはまず4kmのロード登りから始まります。勾配はさほどきつくないですが、スタート地点で標高1520mを超えているので、想像以上に息が上がります。序盤なので無理は禁物ですが、ここで歩いていると山頂の関門突破は難しいかもしれません。4km(標高1866m)の登山ゲートには1個目のエイドがあります。ほとんど水を飲んでいなかったのでスルーしました。

4km(標高1866m)~9km(標高3051m)

標高1850mの登山ゲートからは山岳パートです。ここから標高3000mまでの約5kmは段差の高い木段が続きます。傾斜も20~25%あるので、私は段差の低い階段やと階段のつなぎパートこそ走りましたが、基本パワーウォークでした。手すりがあるところは手すりを利用して登りました。7km地点(標高2072m)には2個目のエイドがあります。ここで500mlの水分を補給しました。

9km(標高3051m)~10.5km(標高3668m)

標高3000mを超えると石段が増えてきます。このパートは傾斜がかなりきつく、ハムストリングスやふくらはぎがしんどかったです。この辺りから頭痛やめまいなど、高山病の症状で苦しんでいる選手が多くみられました。標高が上がるにつれて、木々が無くなり景色が開けてきます。途中、よく整備されたきれいな階段が続くパートもありました。このあたりから男子の上位選手と多くすれ違うようになります。10.5km(標高3668m)の山小屋には3個目のエイドステーションがあります。この地点で水がちょうどなくなっていたので500ml満タンに補充しました。

10.5km(標高3668m)~12.3km(標高4095m)

@_guaresti_

山小屋を超えると岩の世界。道しるべにロープが張っており、そこに沿って登っていきます。山小屋からしばらくの間は段差のないゆるい傾斜だったので、ちょこちょこと走ることができました。私がこれまでの人生で行ったことのある1番高い山は富士山の3776m。その標高を超えたときには心が躍りました。標高4000m付近は地上の60%しか酸素濃度がないのですが、不思議と高山病の症状は全くなく、「もうすぐ山頂。人生初の標高4000m超えだ!」とワクワクしながら登っていました。山頂が近づくと傾斜がきつくなり、岩をよじ登って山頂を目指しました。

12.3km山頂(標高4095m)~ゴール(標高1538m)

キナバル山山頂には看板があり、そこをタッチして折り返します。山頂に着いた時間は3時間13分。思った以上に時間がかかっていました。心肺的な弱さというよりは、段差登りの遅さが大きく影響してしまったと思います。パワーウォークは大きな課題…改めて山頂の関門(男子エリート3時間半、女子・ベテラン4時間)は、なかなか厳しい制限時間だなぁと感じました。

山頂について振り向くと、地上は遥か彼方。雲の上から見下ろす景色は、思わず息を呑むほど美しかったです。絶景を見下ろしながら走る時間はとてつもなく幸せで、おもわず笑顔になっていました。

@_guaresti_

@鈴木龍弥

そして、このレースのきついのは、このまま2800m下り続けるというところ。標高3668mの山小屋まで戻ってきた後は段差地獄が続きます。普段は下りが大好きで得意なタイプですが、ここのところ膝の調子が良くなかったので、むしろ下りに大きな不安がありました。だからこそ、膝に負担のかからない下り方を意識し続けながら走りました。

ショートレースでは飛ぶようにスピードを出して下ることが多いのですが、今回はいかに飛ばずに下るかを意識していました。段差を降りるときには重心をあえて下げ、足が地面に近づいてから次の段に荷重を移すようにしました。また、体が沈むと膝に負担がかかるので、お腹に力を入れること・なるべく早く次の足を出すことを意識しました。慎重に下っていた分時間はかかってしまったけれども、これらを意識していたおかげでゴールまで膝が持ってくれたのだと思います。

ずっと階段が続くと、精神的にも「いつまで階段続くねん!」ときつかったです。登山ゲートまで着いたときには「やっと階段が終わった…」とほっとしました。ただ、そこからのロード下りの4kmも長いこと長いこと。ここまでくると、膝だけでなくハムストリングスも爆発寸前なくらいパンパンでした。ただ、全力を出し切ってゴールしたいという思いが強く、必死に足を動かしました。

4時間55分59秒、女子総合6位でのゴールでした。ゴール後は「標高4095mまで登って、ここまで自分の足で帰ってこれたんだ…」という達成感と充実感、そして幸福感で満たされていました。山頂まで登って下る。シンプルなコースだからこそ、純粋に自分と向き合い、山と向き合い、自然を楽しみながら駆け登り、駆け下ることができたように感じます。

参加者はそれなりにいたと思うのですが、大会公式サイトによると、完走者は男子エリートで54人、女子エリートで13人、ベテランで44人でした。男子の1位2位は、私が山頂に着く前にはゴールについていることに驚愕です。

クライマソンではトップ10まで賞金が出ます。表彰式はトップ5までしたが、6位〜10位の選手も順位の札を受付に持っていくと、その場ですぐ賞金を渡してくれました。

レースを終えて

時差と気温差がさほど日本とない分、ヨーロッパ遠征と比べて帰国した後の体調面のしんどさはかなり少ないです。ただ、足のダメージは大きく、今でも太もも前やハムストリングス、腸脛靭帯がパンパンなので、練習は再開せずのんびり過ごしています。現地でレース後、日本から参戦した仲間でいっぱい飲み食いしても一人2500円ほど。マレーシアは日本と比べて物価がとても安かったです。レースの満足度はもちろん、旅行としても楽しい遠征でした。厳しいコース・制限時間だからこそ、挑戦のし甲斐がある大会。これからも世界屈指のスカイランニングのレースとして開催し続けてほしいと願います。そして、日本からもぜひ、いろんな方々に挑戦してほしいと思います。

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